ページの本文へ

  1. トップ
  2. 油圧機器
  3. よくわかる油圧講座
  4. 油圧使用単位と計算例

1. 油圧でよく使用される単位

種類 単位 説明
質量 kg 一般的な質量の単位
力・重量 N 力の計算では現在Nが使用されています。ただし重量を計算する際は今でもkgfで考えたほうがわかりやすいので使用されています。
(例えば体重の場合65kgで表し、体重637Nとはしません)
重量単位kgfのfは質量のkgと分けるため記入しています。
1kgf=9.8N(≒10N)
kgf
圧力 MPa "圧力1Paは油圧計算で使用する場合、単位として小さすぎるので通常はMPaを使用します。
1MPa=1,000,000Pa =10.2kgf/cm2(≒10kgf/cm2
電動機
回転数
min-1
(/min)
電動機(モータ)が1分間に何回転するかを表します。
流量 L/min 1分間にどれだけの流量(L:リットル)の油がポンプや配管に流れるか表したものです。1L=1,000cm3
cm3/sec 1秒間にどれだけの流量(cm3=cc)の油がポンプや配管に流れるか表したものです。
cm3/rev 油圧ポンプ・油圧モータなどが1回転当たりどれだけの量(cm3)の油を吐出する(送り出す)ことができるかを表したものです。 (rev:回転 単位ではありません)
動力 kW 動力1Wは油圧計算で使用する場合、単位として小さすぎるので通常はkWを使用します。1kW=1,000W

2. 圧力計算

2-1. 圧力について

  • 液体に密閉状態で力を掛けます。(F(N)の力で押し付け)
    ⇒この時、押し戻そうとする反力が液体内で発生=圧力
  • 圧力は密閉面全体に均等に作用します。

2-2. 計算方法

  • 上図のように上からピストンに力F(N)を掛けた場合、下向きに押そうとするピストンの面積は A(cm2)になるため、力Fは面積A全体で均等に押すことになります。そのため液体内に発生する圧力P(MPa)は

P(MPa) = F(N) A(cm2)×100

計算例

重量F=10,000N、受圧面積A=20cm2の場合

圧力P = 10,000/(20×100) = 5(MPa)

3. 流量計算

3-1. 油圧ポンプの能力から流量を求める場合

  • 通常油圧ポンプの能力は、カタログなどでは1回転当たり何cm3の油を吐出できるかで表されています。前述の電動機1分間の回転数が決まれば、 油圧ポンプの1分間の流量が決まります。
  • 油圧ポンプの1分間吐出量Q(L/min)
  • ポンプ1回転あたりの吐出量q(cm3/rev)
  • 電動機の1分間あたりの回転数r(min-1)のとき

Q(L/min) = q(cm3/rev)×r(min-1) 1,000

(ポンプ1回転当たりの吐出量(cm3/rev)→ポンプが1回転する間にどれだけ油を送り出せるか示した量です。)

計算例

  • ポンプの1回転当たりの吐出量q:15(cm3/rev)
  • 電動機の1分間の回転数r:1,800(min-1)の場合油圧ポンプの1分間あたりの吐出量Q(L/min)は

1分間吐出量Q = 15×1,800 1,000 = 27.0(L/min)

3-2. 流量の換算

  • 1分間に流れる量を表す場合:L/min
  • 1秒間に流れる量を表す場合:cm3/sec
    (cm3=cc:立方センチメートル)

例:1分間で30Lの油を流す場合:30L/min この30L/minを1秒間で流す量に換算すると

1min = 60secなので 30/60 = 0.5L/sec
1L = 1,000cm3なので 0.5×1,000cm3 = 500cm3/sec

従って:30L/min = 500cm3/sec

4. 電動機回転数計算

4-1. 電動機の極数

  • 一般的な三相誘導電動機は、電動機の回転子(ロータ)と極(ポール:P)との引き込みと反発を利用して回転しています。
    極の数に合わせて、2極(2P)・4極(4P)・6極(6P)の電動機などがあります。

4-2. 電動機の回転数

  • 一般的な交流電源を使用した電動機の回転数は、前述の極数と交流電源の周波数によって計算されます。
  • 交流電源の周波数は、
    東日本:50Hz
    西日本:60Hz

電動機の回転数(min-1) =

120×電源周波数(Hz)×(1-S) 電動機の極数(P)

S:電動機のスリップ(すべり)率
スリップ率:計算上の回転数と、実際のロータの回転数との差を比率で表したものです。
電動機の構造上ロータが回転トルクを発生させるためには、計算上よりわずかに少ない回転数で回転することになります。
電動機(IE1)では4~5%程度
電動機(IE3)では2~3%程度

(すべり率は電動機の容量、負荷率等で変わります。正確な数値はメーカのカタログ等で確認してください)

4-3. 電源周波数・極数と回転数一覧

  • スリップ率S=0とした場合の電動機の回転数(min-1)を下記に表します。
    (実際の回転数はスリップ率の分だけ少なくなります)
極数 回転数(min-1)
50Hz 60Hz
2P 3,000 3,600
4P 1,500 1,800
6P 1,000 1,200

回転数と流量計算例

  • 使用するポンプの1回転当たりの吐出量15(cm3/rev)、電動機4Pを使用、スリップ率4%の場合の流量(L/min)を求める場合

東日本での回転数:

120×50×(1-0.04) 4 = 1,440(min-1)

西日本での回転数:

120×60×(1-0.04) 4 = 1,728(min-1)

ここからポンプの最大吐出量を計算すると、

東日本:

15(cm3/rev)×1,440(min-1) 1,000 = 21.6(L/min)

西日本:

15(cm3/rev)×1,728(min-1) 1,000 = 25.9(L/min)

同じ油圧ポンプを使用した場合、東日本と西日本では最大吐出量が異なります。

5. 電動機の動力計算

  • 動力は前述のとおり「kW」で表します。

5-1. 圧力と流量から必要動力を計算

動力L(kW) = 圧力P(MPa)×流量Q(L/min) 60×効率η

効率η(イータ):

電動機に電気を通して電力を発生させた際、入力電力に対する出力動力との比率
(動力伝達上のロスを差し引いた有効動力の比率)

計算例

  • 油圧回路の設定圧力:5MPa
  • ポンプの吐出量  :30L/min 
  • 効率が80%の場合  必要動力L(kW)は

5×30 60×0.8 = 3.125 ≒ 3.2(kW)

(必要動力を求めているので切り上げています)

5-2. 電動機の規格と選定

  • 一般的には、動力計算で算出した数値より大きいサイズで、一番近いサイズの電動機を選定します。

電動機の規格

電動機の
出力規格(kW)
馬力(PS)
0.4 0.5
0.75 1
1.5 2
2.2 3
3.7 5
5.5 7
7.5 10
11 15
15 20
  • 電動機の出力はkWにて表示されています。
  • 元々動力の規格は馬力(PS)で表示されていたので、電動機規格も馬力に合わせた数値となっています

電動機の選定

  • 上記の計算では、必要動力L=3.2kW となりましたが、この場合通常選定する電動機容量は3.7kW となります。
ページの先頭へ