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  • 油圧装置で発生した流体エネルギーを、押す・引く・回すなどの機械の動作(機械エネルギー)に変換する装置を総称してアクチュエータと呼びます。油圧シリンダは、アクチュエータの中でも流体エネルギーを押す・引くの直線運動に変換します。
    (他には、油圧モータ(回転運動)などがあります。)

1. 油圧シリンダの構造

1-1. 単動形と複動形

  • 油圧シリンダの種類は、シリンダへの作動油の流入・流出方法から、単動形と複動形に大別されます。
単動形 ピストンの片側のみに作動油を流出入させるタイプ。一方向のみ油圧制御し、シリンダを戻す際は自重下降(上下動の場合など)や、バネなどを組込むことにより戻り側の動作を実施します。
複動形 ピストンの両側に作動油を交互に流出入させ、往復動作共に油圧によって制御します。
JIS記号 単動形
JIS記号 複動形
  • 単動形は自重下降の場合は条件が限られ、バネを使用する場合は構造が複雑になりバネの耐久性への問題等あることから、一般的には制御しやすい複動形のシリンダが使用されます。
  • 以降は、複動形のシリンダについて説明します。

1-2. 複動形シリンダの構造

1-2-1. 片ロッド形

  • シリンダロッドがピストンの片側に付いているタイプで、一般的に広く使用されています。

(1)押出し動作

  • シリンダキャップ側に油を供給し、シリンダロッドを押出します。ロッド側は中に入っている油が押出されタンクに戻ります。

(2)引き込み動作

  • シリンダロッド側に圧油を供給し、シリンダロッドを引き込みます。キャップ側は中に入っている油が押出されタンクに戻ります。

1-2-2. 両ロッド形

  • シリンダロッドがピストンの両側に付いているタイプです。

(1)右押出し動作

  • 向かって左側の油路から油供給し、右側にシリンダロッドを押出します。反対側の油路からは油が押出されタンクに戻ります。

(2)左押出し動作

  • 向かって右側の油路から油供給し、左側にシリンダロッドを押出します。反対側の油路からは油が押出されタンクに戻ります。

1-2-3. テレスコープ形

  • 1台のシリンダに寸法の異なる2本以上のピストンを内蔵したタイプです。作動油を流入させると順次ピストンが出て、大きなストロークが出せるようになっています。
  • 下記に2段形の場合の押出動作を説明します。

(1)押出し動作

  • 一般的に下記の順で押出動作します。
    1. (1)押出し側に油を供給します。
      (2)まずはピストン1が押され、ロッド1段目が押し出されます。
      (3)ピストン1が押出端まで移動すると、ピストン2が押され、ロッド2段目が押し出されます。
      (4)ロッド2段を押出すことで、大きなストロークが得られます。

2. 複動片ロッド形シリンダの種類

  • 油圧回路に使用するシリンダの内、複動片ロッド形のシリンダが広く使用されていますので、寸法規格・支持形式の種類等について説明していきます。

2-1. 寸法規格による分類

  • 油圧シリンダを選択する際、まずは、シリンダの内径とロッド径(太さ)を選定します。内径とロッド径は規格(JIS準拠)により決まっています。
  • 同じシリンダ内径で、3種類のロッド径の規格があります。
A形
(Aロッド)
ロッド径が一番太いサイズ。押し側で強い荷重が掛かる場合に使用されます。キャップ側受圧面積(押側):ロッド側受圧面積(引き側)≒2:1になります(下表1参照)。
B形
(Bロッド)
中間のサイズ。特に指定が無ければ一般的によく使用されます。
C形
(Cロッド)
ロッド径が一番細いサイズ。シリンダ押出しの際はそれほど負荷が掛からず引き込み側で負荷が掛かる場合等に使用されます。

表1:一般的なシリンダの内径・ロッド径

シリンダ
内径
(mm)
ロッド径
(mm)
受圧面積(cm2) 速度範囲めやす
(mm/sec)
最大ストロークめやす
(mm)
押側 引く側
A形 B形 C形 A形 B形 C形
32 22.4 118 14 8 4.1 5.5 6.5 8~400 1200
40 28 22.4 18 12.6 6.4 8.6 10
50 35.5 28 22.4 19.6 9.7 13.5 15.7
63 45 35.5 28 31.2 15.3 21.3 25 1600
80 56 45 35.5 50.3 25.6 34.4 40.4 8~300
100 71 56 45 78.5 38.9 53.9 62.6 2000
125 90 71 56 122.7 59.1 83.1 98.1
140 100 80 63 153.9 75.4 103.7 122.8 8~200
160 112 90 71 201.1 102.5 137.4 161.5
180 125 100 80 254.5 131.8 175.9 204.2
200 140 112 90 314.2 160.2 215.6 250.5
224 160 125 100 394.1 193 271.4 315.5
250 180 140 112 490.9 236.4 336.9 392.4

参考)上表のシリンダ内径、ロッド径はJIS B 8367と一部異なっています。
(上表→JIS:22.4→22、35.5→36、71→70、112→110、224→220)が、上表のサイズが一般的です。

2-2. 支持形式による分類

  • 油圧シリンダを支持(固定)する方法は、規格化(JIS準拠)され記号で表記されています。

表2:支持形式と名称略図

支持
形式
名称図面
LA形
LB形
FA形
支持
形式
名称図面
FB形
FC形
FD形
支持
形式
名称図面
CA形
CB形
TA形
TC形

参考)シリンダの座屈

  • シリンダロッドは、押出動作の際圧縮荷重より低い負荷で座屈(負荷に負けてロッドが折れる⇒折損事故)し、動作不良による機械の故障(場合によっては事故)につながる可能性があります。
  • シリンダを選択する際には、シリンダロッド径・支持形式・ロッドの長さ・シリンダ取付位置等から座屈荷重を計算し、シリンダに掛かる負荷が座屈許容値より低いことを確認する必要があります。
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